Going Faraway

渡辺遼遠の雑記帳

翻訳:時の果ての踊り子たち Part 3: 「死すべき者の素晴しさ」 (ジョン・マイケル・グリア)

ジョン・マイケル・グリアによる2019年11月13日の記事の翻訳です。

Dancers at the End of Time, Part Three: A Mortal Splendor

私を批判する人の中には、私は絶対に自分の誤りを認めないと言いたがる人もいる。ある程度の期間、私のことを見てきた読者は、それが真実ではないことを知っているだろうが、我らが時代の多くのファッショナブルな歪曲と同じく、その言葉は実際には言及されていない真理を指し示している。そのような批判者たちが批判しているのは、もちろん、彼らが最も熱心に擁護する一般通念の一部である自明とされる真理を、私が否定していることである。当代の一般通念が常に間違っていて、それよりも私の予測のほうがはるかに正確であるという事実は、単に彼らのイラ立ちに拍車をかけるものでしかない。

そうとは言っても、我らが時代の理性からの逃避に関する3番目で最後の記事を、完全に間違った私の予測についての話から始めよう。過去のブログ The Archdruid Report で、2009年の『奇妙な輝く旗』というタイトルの記事から始まり、私は何度もある予測を述べていた。その記事では、アメリカ政治は経済的利益によって不条理なまでに腐敗していると口にすることを避けるために、政治的言説がねじ曲げられていることを述べ、また「ファシズム」という語がレトリック上の武器として誤った使い方をされているために、広大な盲点が広がっていることを述べた。

当時、オバマ政権は、保険業界が請求したい金額を、法的な罰のもとで強制したとしても、ほとんどのアメリカ人にはいずれにせよ健康保険に加入する余裕がないという事実を、何とかごまかそうと腐心していた。オバマは、医療費は安価になり、既存の保険プランと医師は維持できるだろうと声高に主張しており、人々はまだオバマの発言が全くの嘘であることに気付いていなかった - 我々の多くは、既にもっともな疑いを持っていたけれども。同時に、満足した20%の人々が住まうバブルの外側ではどこであれ、アメリカ人の労働者は、労働者階級の雇用のオフショアおよび、賃金と福利厚生を第三世界の水準にまで下げるために使用しうる (そして、実際にその目的のために使用された) 数百万人もの違法移民の輸入を積極的に奨励する連邦政府政策により、ますます貧困、悲惨と絶望へと押しやられていた。

どれ1つとして偶然ではない。これらすべては、労働者階級アメリカ人の生存よりも、大企業の利益と裕福な中流・中上流階級の利便を優先する超党派の政策コンセンサスの一部だったのである。当時の政治的風景を見て、オバマが推し進めたような政策によって貧困と悲惨の縁に押しやられた何千万という人々の絶望は、爆発へ向かっていると考えていた: 少なくとも、前回の記事で描いたような種類の再興運動が生じるかもしれない; もっと可能性が高いのは、西部山岳地帯と南部を根拠地とする巨大な国内暴動の発生かもしれない; ひょっとすると、十分な人数の軍の将兵が暴動の側に付くならば、内戦が勃発するかもしれない。

私は間違っていた。絶望した労働者階級の人々は、再興運動を起こさなかった。代わりに、彼らはドナルド・トランプといううさん臭いビジネスマン*1を得たのである。彼は労働者階級の懸念について語ることが権力への切符であると理解し、超党派コンセンサスの最も脆弱な場所へ挑戦するスローガンとシンボルを編み出し、絶望した大衆を有力な政治勢力へと鍛え、それに乗って、政治階級全体の統一的抵抗にもかかわらず、ホワイトハウスへと辿り着いたのである。ひとたびトランプのキャンペーンが吸引力を得ると、再興運動やゲリラ戦争に参加していたかもしれない人々は、代わりにトランプのキャンペーンへと集い、2016年11月8日の夜、自身の夢の実現という目もくらむような経験をしたのである。今日でさえ、トランプ派のサイトを訪れてみれば、「奇跡」について恍惚として調子で語る人々を見られるだろう - あまりに多くの失望と裏切りの後で、自身の希望と夢と要求が楽園のこちら側で実現するチャンスがあるのだと、突然に認識したあの夜の瞬間である。

その後、完璧な数学的バランスを取るかのように、トランプの敵対者たちは再興運動のコピーを作り始めた。それが、私の提唱するところでは、この連載記事の最初に議論した、神秘的思考への逃避の裏側にあるものなのだ。今日のアメリカの満足した階級、およびほとんどの英語圏諸国でそれに対応する人々は、耐えがたい現実からのドン・キホーテ的な逃走路を取り、アメリカ軍に対するインディアンの幽霊ダンスと同程度に不毛な、効果的な政治的反対運動とは言いがたい抽象的な儀式を始めたのである。

レジスタンスを自称する者たちが、トランプ大統領という受け入れ難い現実を消し去るために、どれほどの魔法の呪文を唱えたかを見たまえ。(実際に使われる魔法の呪文については、ここでは脇に置いておこう。効果が薄いことは証明されているのだから。) 最初に、選挙人団は一般投票を無視してトランプではなくヒラリー・クリントンホワイトハウスへ入れるべきだというオーバーヒートした主張が見られた*2。そして、ロバート・ミュラーの調査を元にさまざまに - ダジャレを言うことから逃がれられないが - デッチ上げられ トランプ・アップ たロシアとの共謀は、明確に弾劾訴追事由となるというオーバーヒートした主張が見られた。(さまざまな民主党系企業が大量に生産した「ミュラータイムだ!」と書かれたTシャツなどは、今や、私が聞いたところによると、トランプ支持者の間でお気に入りのアイテムとなっているそうだ。) いずれの試みも完全に失敗した。なぜなら、すべての主張は「我々がトランプをとても嫌っているのだから、トランプは追放されるのだ。」ということでしかないからだ。

下院での弾劾をめぐる現状の政治劇も、同じ布から切り取られたものだ。弾劾もすべてパフォーマンスでしかない、なぜなら、弾劾により大統領を罷免することはできないからだ; 上院議員の2/3の投票により弾劾訴追され、有罪判決を受けなければ、大統領は罷免されない。上院が共和党に支配され、共和党支持者のトランプ支持率が95%を超えている時、そんなことは起こりそうにない - 特に、すべてのバカ騒ぎが、トランプのすることは間違っているが、オバマが同じことをトランプに行うのは問題ないという主張にもとづいているからだ: つまりは、対立する党の大統領候補を、選挙キャンペーン中に、外国政府との共謀の容疑で捜査することである。ゆえに、民主党員はまた別の自分たちの墓穴を掘っている。そして、その過程で更に多くの無党派層有権者を遠ざけ、2020年の選挙で自分自身を撃つための弾薬を供給しているのだ。

しかしここで、この議論が始まった場所に戻ろう。つまり、この連載記事の最初に引用したアラン・ジェイコブズと「ジェーン」の2人が丁寧に議論した、理性からの逃走についてである。冷静で、公平で、客観的な思考だけが、民主党に2016年の選挙を結果を覆す力を与え、トランプが捨て去った政策を再確立できるはずなのだが、彼らは正反対の方向へと急ぎ、極端な政策 - たとえば、違法移民への無償医療 - を主張している。まるで自身の岩盤支持層以外は誰にも見られていないかのように。そして、2016年の選挙でヒラリー・クリントンの勝利を予測したフェイク世論調査とまったく同じものを見て自身を慰めている。更には、それを指摘したとすると、確実に、先に述べた通り同じようなうつろな眼をして決まり切った話の繰り返しをされるだろう - 実際、その反応は、ドン・キホーテにあなたはガウルのアマディスやその当時の流行小説の世界に住んでいるのではないのですよと説得しようとした人が受ける反応と同じだろう。

検討すべき問題は、なぜこれが今起きているかということだ。

議論はいろいろな所から始められるだろうが、今のところ最高の方法は、カリフォルニアと呼ばれる破綻国家の話から始めることではあるまいか。ほとんどの読者諸君は、PG&E、カリフォルニアの巨大電力コングロマリットが、重大な火災が発生した際には常に何百万もの利用者への電力供給を遮断していると耳にしたことがあると思う。その理由は、きわめてシンプルである。PG&Eは、インフラ維持と送電線路の清掃に対してあまりにもずさんな仕事しかしてこなかったために、電力網自体がカリフォルニアの山火事の主原因となっているからだ。これは、PG&Eが資金を欠いているからではない。退屈だが必須のメンテナンス業務から、よりメディア受けするプロジェクトや高給取りの管理カーストの膨大な給与やコンサルタント料へと、資金が横流しされたからである。

カリフォルニアの田舎地帯の焦げた森林から、サンフランシスコとロサンゼルスの腐敗しスプロール化した都市圏に向かうと、別種の機能不全に出会うだろう。サンフランシスコに行くなら、有名な歌のアドバイスとは異なり、髪に花を差す必要はない*3; それよりも、靴の外側を覆うビニール袋のほうが役に立つだろう。都市の通りには人糞が落ちているからだ。カリフォルニアの主要都市はホームレスにより壊滅的な問題を抱えており、LAの保健当局は、発疹チフスの蔓延を防ぐために苦労している - そう、シラミに媒介される感染症であり、ほとんどの工業国は1世紀も前に克服したものだ。州政府は、ホームレス問題に対処するために数十億ドルもの連邦政府の資金援助を要求している; トランプ政権の指摘によれば、前政権はその問題に対して既に十億ドルの資金を支出しているのだが、ものごとは継続的に悪化し続けている。

10年前、私が最後にカリフォルニアでしばらく過ごした時には、これほどまでに悲惨ではなかった。確かに、良くはなかった - サンフランシスコは、クリーブランドボルチモアに匹敵する程度の汚れて崩れかけた犯罪多発地域であり、カリフォルニア北部は、農村部の疲弊と悪意ある無視のあらゆる典型的な兆候を示していた。犯罪率は州全体を通してひどいものであり、あらゆる家の窓には鉄格子があり、扉には蹴破られることを防ぐための鉄棒が据えられていた - けれども、最近のニュースは、他のほとんどの人と同じく、私にとっても驚きであった。カリフォルニアの状況は何年にもわたって悪化し続けているため、ここに至り広範なシステミックな崩壊が現実の可能性となるポイントに近づきつつある。

全体として、カリフォルニアは急速に第三世界の地位に近づいている。カリフォルニアは、そのあらゆる標準的な特徴を供えている: 崩壊するインフラ、不十分な公共サービス、泥棒政治的な富裕層と絶望的な貧困層の間の拡大し続けるギャップ、レトリックと責任転嫁に長けているが、住民への基本的サービス提供のスキルを欠く機能不全の政府。あぁ、それと大量の人口流出も忘れてはいけない。ほとんどの第三世界諸国と同じく、カリフォルニアからはより機能不全ではない地域に向かう人々が大量に流出している。ドナルド・トランプは、カリフォルニアをアメリカから切り離すための壁の建設を提案していないが、トランプ支持者のなかにはそう言っている人もいる。彼らが冗談を言っているのか、私には分からない。

心に留めておくべきことは、カリフォルニアが今の困難に陥った原因は、我らが時代の集合知が「後進的」とラベルを貼るようなことを実行したからではないということだ。カリフォルニアは、アーカンソーアラバマウェストバージニア、あるいは、満足した階級の人々が「遅れている」と侮辱するような州を真似したわけではない。まったく逆に、アーカンソーアラバマウェストバージニアの田舎の人々は、気温が高く風が強い時期でも電気を使うことができ、リトルロックバーミンガム、ホイーリングの人々は歩道の人糞を洗い流すことを心配する必要はない。ノー、カリフォルニアは、文化的主流派の人々が先進的と称える政策を取ったことにより今の状況に至ったのである。現在の状況へと進歩したのだ。

カリフォルニアが今日行くところが、アメリカ全体が明日行くところであるというのは、長い間アメリカのパブリックライフの自明の理であった。非常に現実的な意味において、ドナルド・トランプホワイトハウスへ入れたポピュリストの蜂起は、アメリカの大部分の人々がその見通しを見て、震えて「ノー、もう結構だ!」と叫んだときに発生したのである。特にそれが問題とされるのは、カリフォルニアを現在の状況に陥らせたものと同じ広いトレンドが、数十年にわたってアメリカ中で働いているからだ。満足した階級の人々が堕落した贅沢な生活を送る、固く閉じられたバブルの外に出てみれば、眼にするのは朽ちていくインフラ、老朽化した建物、そして最高の日々は既に過ぎたのだという浸透した感覚である。それが、トランプのスローガン「Make America Great Again」に力を与えたものである: この国は、正気の人間であれば誰も望まないところへ"歩"を"進"めているという感覚であり、また、何らかの改善へ向かうためには、前に進むモメンタムを止めて、我々が後に残してきたものへと戻らなければならないという感覚である。

それこそがまさに、逆に、トランプの反対者が最も熱心に否定したものなのだ。「我々は戻りません」ヒラリー・クリントンは選挙キャンペーン中に言い放った。「我々は前へ進むのです。」 人種差別というブラシでトランプとその支持者に泥を塗ろうとする継続的な試みは、都市部アフリカ系アメリカ人の投票を保持する意図 - 民主党の選挙戦略の要 - があるというだけではなく、その核心の一部なのである。それはまた、過去を可能な限り最悪の光で照らす試みでもあったのだ。そうすれば、民主党員は現在の状況と数十年前に存在していた状況とを比較して、なぜそれ以来これほどまでにものごとが悪化しているのかと問わなくても済むからだ。

そこで、2016年の選挙以来、アメリカの左派のかなりの数を捉えた理性からの逃走、完全なる神秘世界への突入、その本質を垣間見ることができる。その大統領選挙は、壮大なる進歩の行進の、次の偉大な一歩となるはずであった。アメリカ初の黒人大統領に続く、最初の女性大統領である。神話的な世界観の中から見れば、2008年の投票が締め切られた瞬間、オバマが選挙キャンペーンの公約を破棄したことは問題ではなかったし、また、オバマジョージ・W・ブッシュ政権の第三期と第四期とも思えるような創造的模倣を続けたことも、ドローン攻撃と国外戦争を遂行したことも問題ではなかった。それらは、共和党が同じことを行なっていたときには民主党が憎悪すると言っていた政策だったのだが。クリントンが、同じ政策を倍にして実行すると約束したことも、問題ではなかった。政党への帰属意識と彼女の性別が、信者の眼のなかでは他のすべての問題をささいなものにした。

そして彼女は負け、トランプが政権を取り、先に述べた超党派の政策コンセンサスの中で宙吊りにされていた多数の人々の状況は改善し始めた。利益を得たのは白人労働者階級だけではない; アフリカ系アメリカ人コミュニティの失業率も統計開始以来最低の水準に達し、他のマイノリティ集団の数値も遅れを取っていない。

それが、私が思うに、選挙以降に見られたファンタジーへの逃避を駆り立てているものである。1960年代の社会革命の失敗により、アメリカ左派は産業界と悪魔の取引を行ない、あらゆる人々の犠牲のもとに大企業とその株主に利益をもたらす経済政策の支持に合意し、引き換えに、1960年代以降の左派が望む文化政策の支持を大企業から取り付けたのである。これらすべては、この種の取引が一般的に曖昧である通りに、左派が支援するとされるマイノリティコミュニティに及ぼす経済政策の効果に対する意図的な無視により、曖昧にされた。専門家も政治家も、雇用のオフショアリングと違法移民による労働市場の洪水は、賃金を低下させることはないと声高に主張したが、もちろんその通りになった; その他にも、一方には民族的マイノリティを莫大なスケールで大量投獄することを容易ならしめる努力があり、 - ヒラリー・クリントンの「スーパープレデター」についての話が思い出される - 他方では、企業エスタブリッシュメントの価値観を揺るぎなく受け入れる限りにおいて、わずかばかりの非白人を管理階級へと登用する制度装置があった。

それこそが、2016年の選挙の結果、クローゼットから踊り出てきた骸骨なのである。両党に採用されたネオリベラルな経済政策は、ほとんどのアメリカ人にとって完全な厄災であったという事実から眼を背けることは不可能となった。ネオリベラルの正統性に同調しない者を嘲笑するいじめっ子としてメディアで名声を得たポール・クルーグマンも、数ヶ月前、自分の誤りを認めることを余儀なくされた*4。左派的な政治観を持つ何百万ものアメリカ人は、自身の信じていた専門家と信頼していたメディアが嘘吐きであるか単に完全なる誤りであったという事実、そして、それらの人々は、膨大なアメリカ人を貧困と絶望に陥れさせた政策を支持していたというだけではなく、そこから利益を得ていたという事実に直面せざるをえなかった。それは飲み込みづらい苦い薬であり、また更には、その薬を処方した赤ら顔の医者は、満足した階級の繊細な感情を気にかけていないことを誇示するために、よりいっそう薬を飲み込むことが難しくなる。

であるから、民主党の下院議員が、ドン・キホーテに風車への突撃を行わせたのと同種の精神状況で、政治的動機にもとづいた調査を次々と実施したり、左翼的な世界観を持つ多数の人々が、自分はアニメのキャラクターであると信じ込んだ若者のごとく、自分はファシズムと戦うヒーロー的な戦士だと信じ込んだりしても、全く不思議はないのである。彼らの人生の根底をなす信念の一つ - 世界はより明るく良い未来へと向けて進んでおり、自身に個人的利益をもたらす政策は、その偉大なる前進を後押しする政策でもあるという確信 - は、周囲で取り返しがつかないほどコナゴナに砕け散ってしまっている。それこそが、彼らが幽霊ダンスその他の模倣へと駆り立られ、世界が決して与えてくれない奇跡的な救済を待ちながら、時の果てで踊っている理由なのである。

そうしている間にも、この国の残りの部分が、カリフォルニアと同じ状況へ陥ることを防げるかもしれない政策は、この瞬間にも制定される可能性がある。そのような政策は単純明快である: もはやまかない切れなくなった国外への軍事的コミットメントからの段階的な撤退、ドルが世界の基軸通貨でなくなり、我々が望むものを何でも借用書 [IOU] を発行して支払うことができなくなった時に備えるための、国内製造業の再建を目指した貿易障壁、既存の労働者階級を悲惨に陥らせることなしに受け入れ可能な毎年の移民の人数に関する、持続的で思慮深い国家的議論、社会立法の権限を個々の州へと戻し、左であれ右であれ単一の道徳的イデオロギーを合衆国全体に課そうとする試みに対する終止符、そして、政治を妥協と共存へ向けて方向転換することであり、それ以外に、これほどまでに広大で、多様性に富む、意固地な共和国において相対的な調和を取り戻す方法はないだろう。

これらの政策は、私が「長き没落」と呼んだゆっくりとした衰退、つまり、あらゆる文明の物語を紡ぐ下方への軌道を防ぐことができるのだろうか? もちろん、そうではない。トランプは前へと進み、2024年かそこらには、1969年のイベントを再演して月面に更なる足跡をつけるという約束を果たすかもしれない - 他の文明は何世紀も耐えるピラミッドや寺院を残した一方、我々の文明の月面着陸という偉業は、その仕事を終えた瞬間に金属のスクラップと化すロケットを使用したということは、示唆的ではないだろうか? - しかし、結局のところ、それはまた別の儀式的行為である。

それでも、ある種の衰退は他のものよりも早い。ピークオイルシーンの最盛期には、衰退の影響をやわらげるために経済的な再ローカル化の価値をたくさんの人が議論していた。ここまでに私が議論した個々の別のステップも、その目標を更に促進するであろう。偉大なアメリカ人詩人のロビンソン・ジェファーズがうまく表現している通りである:

You who make haste haste on decay; not blameworthy; life is good, be it stubbornly long or suddenly A mortal splendor: meteors are not needed less than mountains: shine, perishing republic.

なんじ腐敗へ急ぐ者; 責めてはいない; 人生は良い、頑固に長くとも突然でも 死すべき者の素晴しさ: 流星は山々ほどは必要ない: 輝け、滅びる共和国。

死すべき者の素晴しさから、少なくともしばらくの間は、眼を逸らすことができるかもしれない。それでもやるべき仕事はまだたくさん残されている。時の果ての踊り子たちは、儀礼的なステップを踏みながら空想的な未来を待ち望んでいるのだが、そのような未来はそもそも決して起こるはずのなかったものだ。その一方で我々は、腕まくりをして、自分たちが達成しうることを考えたほうが良いかもしれない。

*1:日本語訳はこちら 翻訳:ドナルド・トランプと憤怒の政治 (ジョン・マイケル・グリア) - Going Faraway

*2:アメリカ大統領選挙は、制度上は直接選挙ではなく、大統領候補へ投票する選挙人を選ぶ選挙であるため、理論上、選挙人団は一般投票に従わず別の候補を選んでもよい。ただし、多くの州では選挙人団は一般投票の結果に従うことが義務づけられており、これに違反した投票が大統領選挙の結果を左右した事例はこれまで存在しない

*3:スコット・マッケンジーの 『花のサンフランシスコ』を指す。

*4:日本語訳はこちら グローバル化の弊害を見落とし、トランプ台頭を招いた経済学者のいまさらの懺悔 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト