Going Faraway

渡辺遼遠の雑記帳

2016年米大統領選挙 ジョン・マイケル・グリアのトランプ当選予測エッセイ集

既にこのブログで何度も取り上げているジョン・マイケル・グリアですが、彼は2016年1月の時点でドナルド・トランプの大統領当選を正確に予想していました。それもただの思い付きや当てずっぽうではなく、アメリカの田舎町で自身が見聞きしたことをベースとして、その上に歴史の知識と歴史の勃興サイクルについての深い洞察を加え、アメリカ政治の (そして、民主国家の) 現在と未来を極めて説得力高く描き出していました。

そこで、グリアの2016年の時事評論のなかでも特に興味深いものをピックアップしてみました。日付は、特に明記していなければすべて2016年ものです。またグリアの旧ブログ『The Archdruid Report』は既に閉鎖されているため、有志のミラーサイトにリンクしています。

Down the Ratholes of the Future (1月6日)

新年の企画として、毎年グリアは昨年の予測振り返りと当年の予測を行っている。この記事でドナルド・トランプの当選の可能性について初めて言及した。

一方で、アメリカ人の生活の政治的コンテキストは、爆発へと向けて定常的に加熱されている。私がこれを書いているとき、重武装民兵集団がオレゴン州南東の砂漠にある連邦の野生動物保護区の建物を占拠し、膠着状態を起こそうと試みている。このようなスタントが道化じみたものであることは疑いがないが、ジョン・ブラウンといった暴力的奴隷廃止論者の行動も、同時代にはそれと同じくらい無意味なものだと見なされていたことを忘れてはいけない; 彼らが重要であるのは、純粋に、内戦へ向かう圧力の高まりの目安としてである-そして、それこそがまさに私がたった今説明したイベントから読み取ったことである。

つまりは、私はいかなる規模の武装蜂起であれ、今年の合衆国で発生するとは予期していない。田舎と都市部でのゲリラ戦闘の時代、路肩爆弾、強制収容所、あらゆる側からのおぞましい人権侵害、そしてあらゆる方向へと逃げる何百万人もの難民、などがアメリカ合衆国で発生するまでには、まだしばらくの時間がある。それには一つの決定的な理由がある: 近い将来において武装蜂起する可能性が最も高い人々のほとんどは、最後の挑戦として政治プロセスに賭けると決断したからだ。そして、彼らにそれを仕向けたのは、ドナルド・トランプの立候補である。

トランプの、フロントランナーの立場への驚くべき進歩の重要性は、あまりに巨大で複雑であるため近い将来にこのブログで独立の記事を書くつもりだ。今のところ、関連のあるポイントは、名目上の共和党員は、党の公式認定候補者によって宣伝され平常運転にあまりにも疲れているため、彼らはダビーオバマ時代とでも呼びうる超党派のコンセンサスを壊すためであれば、ほぼ誰にでも進んで投票するだろうから: ダビーオバマコンセンサスとは、アメリカ人の膨大なマジョリティを悲惨へと追いやり、しかし特権的なマイノリティに利益を与え続けているコンセンサスである- 延々と批判されている1%ではなく、アメリカ人の収入上位20%程度のマイノリティである。

ヒラリー・クリントンは、20%の有権者の候補者である。過去20年かそこらの間ずっと続いていたものごとを、今後も継続したいと願う者たちの選択肢である。より正確には、彼女は平常運転の ビジネス・アズ・ユージュアル軍団の左翼の候補者の1人である。というのは、民主党へ投票する上位20%の半数は彼女のまわりへと集い、競争を行なわせないために最大限の努力をしたからであり、一方で共和党へ投票する半数は、ジェブ・ブッシュあるいはそれ以外の凡庸で代替可能なライバルのもとへ集うことに失敗したため、下位80%の人間が独自の選択をした際に妨害を受けたからである。未だバーニー・サンダースが困難をくぐり抜けて逆転する可能性はある、もしも彼がこの先の初期の予備選挙のいくつかでクリントンを完全に打ち負かし、民主党の下位80%が自身の声を聴かせられたら。けれども、それは途方もない挑戦である。現時点においてそれよりも可能性が高そうなのは、ヒラリー・クリントンドナルド・トランプである。そして、サンダースであればトランプを負かせられるかもしれないが、クリントンではほぼ確実に不可能である。

長く、鈍重で、派手に腐敗した選挙プロセスをアメリカが進むにつれて、確実にたくさんの転換点が存在するだろう。共和党が何らかの方法によりトランプを指名から締め出すことはありうる。そのような場合には、誰が共和党候補となったとしても、共和党支持者の下位80%は家に留まるために地滑り的な敗北を喫するだろう。多くの選挙不正が行なわれた場合、-選挙不正が純粋に共和党の習慣であると考える人は、シーモア・ハーシュの『The Dark Side of Camelot』を読むべきだ。そこでは、1960年の大統領選挙で、ジョー・ケネディが彼の息子[ジョン・F・ケネディ]のために買収を行なったことが詳細に記されている-クリントンが勝ち進み、ホワイトハウスに入る可能性もある。サンダースが、民主党エスタブリッシュメントによって上げられた防壁をよじ登り、選挙戦に勝つ可能性さえある。

現時点においては、しかし、これについて私が言いたいことよりは少ないものの、2016年の選挙の結果として最も可能性が高いのは、2017年1月にドナルド・トランプが大統領として任命されることであると思う。これがスペシフィックな予測の3番目である。

Donald Trump and the Politics of Resentment (1月20日) 
ドナルド・トランプと憤怒の政治

トランプの躍進に関する、最初のまとまった記事。アメリカの労働者階級の苦境と、それを効果的に活用したトランプの戦略。

The End of Ordinary Politics (4月6日)
ふつうの政治の終わり
Where On The Titanic Would You Like Your Deck Chair, Ma’am? (4月27日)
タイタニック号の上のどのデッキチェアをお好みで?ご夫人。
A Few Notes on Burkean Conservatism (5月11日)
バーク保守主義についてのいくつかの覚書
Outside the Hall of Mirrors (6月29日)
鏡の間の外で

Brexitに関する評論

Scientific Education as a Cause of Political Stupidity (7月13日)
政治的愚かさの原因としての科学教育

エンジニアの思考が政治について誤った判断を下すことについての解説

The Coming of the Postliberal Era (9月28日)
ポストリベラル時代の到来
Reflections on a Democracy in Crisis (11月9日)
危機における民主主義についての省察

11/8 の大統領選挙直後に書かれた記事。政敵を悪魔化するレトリックについて。

When The Shouting Stops (11月16日)
叫び声が止むとき

「なぜ彼らはトランプに投票したのか?」 その答えをトランプに投票した人に聞いてみる。

The Kek Wars (2018年7月)
ケク戦争

番外編。トランプを大統領の座へと押し上げた、アメリカの2ちゃんねるに集った混沌の魔術師たちの話。