Going Faraway

渡辺遼遠の雑記帳

翻訳:ドナルド・トランプと憤怒の政治 (ジョン・マイケル・グリア)

この記事は2016年1月20日に書かれた。本記事の2週間前の記事で、ジョン・マイケル・グリアは2016年の予測としてドナルド・トランプが大統領に当選すると述べた。本記事は、その予測記事に対する反響への補足である。 DONALD TRUMP AND THE POLITICS OF RESEN…

2016年米大統領選挙 ジョン・マイケル・グリアのトランプ当選予測エッセイ集

既にこのブログで何度も取り上げているジョン・マイケル・グリアですが、彼は2016年1月の時点でドナルド・トランプの大統領当選を正確に予想していました。それもただの思い付きや当てずっぽうではなく、アメリカの田舎町で自身が見聞きしたことをベースとし…

書評: AIレジェンド大盛りインタビュー集 『The Architects of Intelligence』 (マーティン・フォード)

AI (人工知能) 研究に大きな貢献をなし、現在も最先端を走り続けている伝説的な研究者・技術者たちへのインタビューをまとめた書籍で、人工知能の過去と未来を考えるための必読書であると思う。Architects of Intelligence: The truth about AI from the peo…

ミニレビュー:NiZ atom66 キーボード

キーボードとiPad年末にiPad Proを新調し、ブログなど文章書きの環境を一新するべく Bluetoothキーボードを購入したので、感想を書いてみたい。中国製のNiZ plum ATOM66 というキーボードだ。NiZ 静電容量無接点方式 35g荷重 USB/Bluetooth 4.0両対応 コンパ…

書評:トランプ政権の暴露本決定版、だが…『FEAR 恐怖の男』(ボブ・ウッドワード)

FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実 作者: ボブ・ウッドワード,伏見威蕃 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社 発売日: 2018/12/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る トランプ政権の内幕を暴露する本は、『炎と怒り』(本サイト書評) など、これま…

翻訳:インテリゲンチャのたそがれ (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"The Twilight of the Intelligentsia" の翻訳です。元記事は2018年11月9日、米中間選挙の翌日に公開された。記事冒頭には選挙結果について簡単な論評が書かれているが、訳出にあたっては省略した。 The Twilight of …

翻訳:アメリカとロシア: タマヌースとソボルノスト (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"America and Russia, Part Two: The Far Side of Progress" の翻訳です。パート1, 2はこちら America and Russia: Tamanous and Sobornost この連載の最初の2つのエッセイでは、オズワルト・シュペングラーのビジョ…

翻訳:アメリカとロシア Part2: 進歩という楽園の向こう側 (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"America and Russia, Part Two: The Far Side of Progress" の翻訳です。パート1はこちら America and Russia, Part Two: The Far Side of Progress この連載記事の最初のパートである前回の記事では、オズワルト・…

翻訳:アメリカとロシア Part1 国境の泡立ち (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"America and Russia, Part One: Stirrings in the Borderlands" の翻訳です。若干の補足として、シュペングラーの「文化 (Kultur)」と「文明 (Zivilisation)」という用語について、『西洋の没落 I (中公クラシックス…

ミニレビュー: オンライン辞書ジャパンナレッジ

上記まとめを読んで触発されたので書く。 数年前から、有償のオンライン辞書 ジャパンナレッジを愛用している。 一番利用頻度の高い機能は英語辞書だろうか。ランダムハウス英和大辞典 (語源が掲載されているので一番よく使う)、プログレッシブ英和中辞典、C…

2018年を振り返る

オクスフォード英語辞典が選ぶ2018年の流行語候補の中に、「techlash」という語があった。これはtechnologyとbacklash (反発、反動) を組み合せた語で、読んで字のごとくテクノロジーおよび巨大テクノロジー企業 (GAFA) に対する反感・反発を表す言葉だ。 (…

スクール・ライブラリ・ジャーナルが選ぶ2018年ティーン向けの一般書 (ノンフィクション部門)

今年読んだ洋書の評判や翻訳出版状況を調べている間に、こんなリストを見つけました。私自身はほとんど未読ですが、面白そうな本が多かったのでここで紹介します。ティーン向けの本ということで、英語の語彙もそれほど難しくなさそうなので、あまり洋書を読…

書評:トランプリスク 『The Fifth Risk』 (マイケル・ルイス)

ご存知超売れっ子ノンフィクション作家、マイケル・ルイスの新刊。 The Fifth Risk: Undoing Democracy 作者: Michael Lewis 出版社/メーカー: Allen Lane 発売日: 2018/10/02 メディア: ハードカバー この商品を含むブログを見る さて、マイケル・ルイスと…

書評:しょぼい勤め人が読む『しょぼい起業で生きていく』(えらいてんちょう)

著者のえらいてんちょう (えらてん) 氏は、実は学生の頃からの数年来の友人だ。本書は、えらてん自身のリサイクルショップ、学習塾やイベントバーなどの起業と経営の実体験をもとに「しょぼい起業」の考え方と実践法を綴ったものだ。 しょぼい起業で生きてい…

書評:リベラル派によるリベラル批判の書 『リベラル再生宣言』(マーク・リラ)

最近では、日本でもアメリカでも、「リベラル派」は何となくうさん臭いものと思われている傾向があるようだ。「自由」を旗印に掲げながらも、その自由はリベラル派自身のみにしか適用されず、意見の異なる他者には極めて権威主義的に振る舞う態度を指摘され…

書評:タコであるとはイカなることか『タコの心身問題』/『Other Minds』(ピーター・ゴドフリー=スミス)

タコはとても知能が高い。なにせ、ワールドカップの優勝国を予想できるくらいなのだから…という冗談はさておき、本書『Other Minds』は、タコとイカに魅了された哲学者による、知能と意識の起源についての探究である。 Other Minds: The Octopus, the Sea, a…

読書メモ:オピオイド危機あるいは"ピル"ビリー・エレジー 『Dopesick』 (ベス・メイシー)

現在アメリカでは薬物中毒が深刻な社会問題となっていると、おそらく一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。過去20年の間に、700万人以上が薬物中毒となりそのうち20万人以上が死亡した。50代以下の若年層では、既に交通事故や銃器による年間の死者数…

翻訳依頼に関するスタンスについて

最近、Twitterやメール等で「記事や本を訳してほしい」という依頼を頂くことがあるので一応明記しておきます。 私の翻訳は純粋な余暇の趣味の活動なので、報酬の有無に関わらず基本的にはお受けしておりません。依頼があった記事について、気が向いた場合に…

翻訳:ケク戦争Part4 闇の中でうごめくもの (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"The Kek Wars, Part Four: What Moves In The Darkness" の翻訳です。 The Kek Wars, Part Four: What Moves In The Darkness 前回のケク戦争のスリリングなエピソードでは、アウトサイダーの一団が、集合的に「ちゃ…

翻訳:ケク戦争Part3 カエル神の凱旋 (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"The Kek Wars, Part Three: Triumph of the Frog God" の翻訳です。 The Kek Wars, Part Three: Triumph of the Frog God 前回のケク戦争についてのスリリングなエピソードでは、何千人もの不満を持つ若者たち、我々…

翻訳:ケク戦争Part2 大聖堂の影で (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"The Kek Wars, Part Two: In the Shadow of the Cathedral" の翻訳です。 The Kek Wars, Part Two: In the Shadow of the Cathedral ケク戦争に関する前回のスリリングなエピソードでは、アメリカの管理貴族とその下…

翻訳:ケク戦争 Part1 貴族制とその不満 (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"The Kek Wars, Part One: Aristocracy and its Discontents" の翻訳です。 The Kek Wars, Part One: Aristocracy and its Discontents 2016年の大統領選挙キャンペーンが最高潮に達して以来、この選挙キャンペーンの…

翻訳:オルト・ライト、コントロール・レフト、エスケープ・センター (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"The Alt-Right, the Ctrl-Left, and the Esc-Center" の翻訳です。この記事は、2018年の7月4日、アメリカ独立記念日に公開されました。 The Alt-Right, the Ctrl-Left, and the Esc-Center 2016年の1月、ドナルド・…

書評:開発経済学+認知科学 『Factfulness』(ハンス・ロスリング)

ビル・ゲイツが絶賛しているコメントを見て読んでみた。タイトルからはフェイクニュースの話題かと思ったけど、実際は、世界の人口動態、所得、経済や健康状態に関する知識の誤りを正し、また、何故そのような誤りが生じるのかを認知科学的なバイアスから説…

読書メモ:イスラーム人生論 『みんなちがって、みんなダメ』(中田考)

北大生シリア渡航未遂事件で一躍有名になった(?)イスラーム法学者、ハサン中田考先生の新刊。 みんなちがって、みんなダメ 作者: 中田考 出版社/メーカー: ベストセラーズ 発売日: 2018/07/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る イスラームの世界…

書評:『知ってるつもり――無知の科学』(S. スローマン & P. ファーンバック)

とても面白く、また現代的な意義の大きい本である。ぜひ読むことを薦めたい。 しかし、おいそれと内容を要約して紹介することは多少はばかられる本である。なにせ、扱っている内容が「無知」-- 我々は、自分が思っているほどにはものごとを知っていないこと-…

読書メモ:シンギュラリティの宗教性 『Apocalyptic AI』 (ロバート・ゲラチ)

キリスト教神学について僅かなりとも触れたことのある人であれば、特にカーツワイル氏のシンギュラリティの物語と、キリスト教終末論の類似性には即座に気が付くだろうと思う。 慈悲ぶかい超知能AIが神の位置を占め、ナノボットは貧窮と病苦に終止符を打ち、…

書評:ルポ・セラノス事件 『Bad Blood』 (ジョン・カレイロウ)

下手なサスペンス小説よりも面白くて、硬派で難解な本であるものの一気読みしてしまった。ベンチャー企業の詐欺行為を最前線で追求した迫真のルポタージュというだけでなく、「起業家や経営者が語る夢想的で荒唐無稽なビジョン」に対する態度の再考を迫る、…

ハンナ・アーレント『暴力について』の未来学者に関する抜粋

暴力について―共和国の危機 (みすずライブラリー)作者: ハンナアーレント,Hannah Arendt,山田正行出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2000/12/09メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 16回この商品を含むブログ (17件) を見る アーレントは、人間が…

書評:『サイバネティクス全史』(トマス・リッド)

「サイバー」という語の起源と変遷を辿ることでさまざまな技術史と技術の文化史を統一的にまとめ上げる、ポピュラーサイエンス本かくあるべしというお手本のような本。二匹目のどじょう狙いのようなあからさまなタイトルによって、むしろ本書の企画のオリジ…