Going Faraway

渡辺遼遠の雑記帳

ミニレビュー: オンライン辞書ジャパンナレッジ

上記まとめを読んで触発されたので書く。

数年前から、有償のオンライン辞書 ジャパンナレッジを愛用している。

一番利用頻度の高い機能は英語辞書だろうか。ランダムハウス英和大辞典 (語源が掲載されているので一番よく使う)、プログレッシブ英和中辞典、Cambridge English Dicstionaryなど複数の辞書から串刺し検索ができる。

ヨーロッパ言語 (独仏西伊) の辞書 (日本語→対象言語、対象言語→日本語それぞれ) もあり、外国語学習はもちろん、英語・日本語の文章でも出てくる外国語の単語を調べるのに重宝している。(各言語の不規則動詞活用表も付属している)

他にも、平凡社の世界大百科事典と日本大百科全書 (ニッポニカ) が検索でき、新語・流行語についてもImidasや現代用語の基礎知識から調べられる。さすがに新語・新用法については少し弱いが (たとえば、前回取り上げた"toxic" の新用法は掲載されていない)、ニッポニカは月1回更新で時事ネタの解説もある。

地味ながら私のお気に入りの辞書は、数年前にもこのブログで取り上げた『数え方の辞典』だ。(「工場」、「アプリケーション」や「帳票」をどう数えれば良いのか、すぐに分かるだろうか?) 。


しかし、今は強力な検索エンジンもあるし、無償公開されている英語辞書もたくさんあり、Wikipediaという無料の事典も存在する。もちろん、私自身もこういったサイトを便利に使っている。それではなぜ、わざわざ有償のサービスも併用しているのかと疑問に思うかもしれない。

それは、情報とは、ノイズが削ぎ落されていることに価値があるからだ。近年のインターネットには、形式だけが整った中身のない情報、調べものをする受信者側が知りたいと思う情報ではなく、売り手である発信者側が知らせたい情報に溢れている。Wikipediaも、読み手にとって「知りたい」情報よりも書き手が「書きたい」情報にあまりに力が入れられすぎではあるまいか。このような状況では、編集者のフィルタを通ったコンパクトな情報にはお金を払うだけの価値があると信じている。

ところで、人間の知覚器官と「知能」も、実際のところ余計なノイズを排除し、生存という目的に適う情報を取捨選択する機能を持っている。仮に、あらゆる情報とデータを蓄積できたとしても、その存在は外の世界そのものと同等の複雑さを持つことになるだろう。情報の取捨選択は、人間が知的であることの本質なのだ。

ここで挙げた以外にも多数のコンテンツがあるので、興味のある方はサイトのコンテンツ一覧を参照してほしい。月額1650円で決して安くはないものの、総計550万円分の辞書と電子書籍が実質使い放題であることを考えれば、そのぶんの価値はあると思う。

ちょっと不満なところ

ジャパンナレッジの機能にはおおむね満足して課金を続けているものの、若干の不満点としては電子書籍リーダーが使いづらい点である。東洋文庫、日本古典文学全集などが掲載されており全文検索も可能だが、「一昔前の電子書籍」という趣きで (たとえば、ページをめくると画面遷移があるなど)、長い文章を読む気にはなれないのが残念だ。紙の書籍を買ってほしいという意味なのかもしれないが、もう少し頑張ってほしいと思う。