Going Faraway

渡辺遼遠の雑記帳

書評:リベラル派によるリベラル批判の書 『リベラル再生宣言』(マーク・リラ)

最近では、日本でもアメリカでも、「リベラル派」は何となくうさん臭いものと思われている傾向があるようだ。「自由」を旗印に掲げながらも、その自由はリベラル派自身のみにしか適用されず、意見の異なる他者には極めて権威主義的に振る舞う態度を指摘され…

書評:タコであるとはイカなることか『タコの心身問題』/『Other Minds』(ピーター・ゴドフリー=スミス)

タコはとても知能が高い。なにせ、ワールドカップの優勝国を予想できるくらいなのだから…という冗談はさておき、本書『Other Minds』は、タコとイカに魅了された哲学者による、知能と意識の起源についての探究である。 Other Minds: The Octopus, the Sea, a…

読書メモ:オピオイド危機あるいは"ピル"ビリー・エレジー 『Dopesick』 (ベス・メイシー)

現在アメリカでは薬物中毒が深刻な社会問題となっていると、おそらく一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。過去20年の間に、700万人以上が薬物中毒となりそのうち20万人以上が死亡した。50代以下の若年層では、既に交通事故や銃器による年間の死者数…

翻訳依頼に関するスタンスについて

最近、Twitterやメール等で「記事や本を訳してほしい」という依頼を頂くことがあるので一応明記しておきます。 私の翻訳は純粋な余暇の趣味の活動なので、報酬の有無に関わらず基本的にはお受けしておりません。依頼があった記事について、気が向いた場合に…

翻訳:ケク戦争Part4 闇の中でうごめくもの (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"The Kek Wars, Part Four: What Moves In The Darkness" の翻訳です。 The Kek Wars, Part Four: What Moves In The Darkness 前回のケク戦争のスリリングなエピソードでは、アウトサイダーの一団が、まとめて「ちゃ…

翻訳:ケク戦争Part3 カエル神の凱旋 (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"The Kek Wars, Part Three: Triumph of the Frog God" の翻訳です。 The Kek Wars, Part Three: Triumph of the Frog God 前回のケク戦争のスリリングなエピソードでは、我々は何千人もの不満を持つ若者たち、我々の…

翻訳:ケク戦争Part2 大聖堂の影で (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"The Kek Wars, Part Two: In the Shadow of the Cathedral" の翻訳です。 The Kek Wars, Part Two: In the Shadow of the Cathedral 前回のケク戦争に関するスリリングなエピソードでは、アメリカの管理貴族とその下…

翻訳:ケク戦争 Part1 貴族制とその不満 (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"The Kek Wars, Part One: Aristocracy and its Discontents" の翻訳です。 The Kek Wars, Part One: Aristocracy and its Discontents 2016年の大統領選挙キャンペーンが最高潮を打って以来、この選挙キャンペーンの…

翻訳:オルト・ライト、コントロール・レフト、エスケープ・センター (ジョン・マイケル・グリア)

以下は、ジョン・マイケル・グリアによる"The Alt-Right, the Ctrl-Left, and the Esc-Center" の翻訳です。この記事は、2018年の7月4日、アメリカ独立記念日に公開されました。 The Alt-Right, the Ctrl-Left, and the Esc-Center 2016年の1月、ドナルド・…

書評:開発経済学+認知科学 『Factfulness』(ハンス・ロスリング)

ビル・ゲイツが絶賛しているコメントを見て読んでみた。タイトルからはフェイクニュースの話題かと思ったけど、実際は、世界の人口動態、所得、経済や健康状態に関する知識の誤りを正し、また、何故そのような誤りが生じるのかを認知科学的なバイアスから説…

読書メモ:イスラーム人生論 『みんなちがって、みんなダメ』(中田考)

北大生シリア渡航未遂事件で一躍有名になった(?)イスラーム法学者、ハサン中田考先生の新刊。 みんなちがって、みんなダメ 作者: 中田考 出版社/メーカー: ベストセラーズ 発売日: 2018/07/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る イスラームの世界…

書評:『知ってるつもり――無知の科学』(S. スローマン & P. ファーンバック)

とても面白く、また現代的な意義の大きい本である。ぜひ読むことを薦めたい。 しかし、おいそれと内容を要約して紹介することは多少はばかられる本である。なにせ、扱っている内容が「無知」-- 我々は、自分が思っているほどにはものごとを知っていないこと-…

読書メモ:シンギュラリティの宗教性 『Apocalyptic AI』 (ロバート・ゲラチ)

キリスト教神学について僅かなりとも触れたことのある人であれば、特にカーツワイル氏のシンギュラリティの物語と、キリスト教終末論の類似性には即座に気が付くだろうと思う。 慈悲ぶかい超知能AIが神の位置を占め、ナノボットは貧窮と病苦に終止符を打ち、…

書評:ルポ・セラノス事件 『Bad Blood』 (ジョン・カレイロウ)

下手なサスペンス小説よりも面白くて、硬派で難解な本であるものの一気読みしてしまった。ベンチャー企業の詐欺行為を最前線で追求した迫真のルポタージュというだけでなく、「起業家や経営者が語る夢想的で荒唐無稽なビジョン」に対する態度の再考を迫る、…

ハンナ・アーレント『暴力について』の未来学者に関する抜粋

暴力について―共和国の危機 (みすずライブラリー)作者: ハンナアーレント,Hannah Arendt,山田正行出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2000/12/09メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 16回この商品を含むブログ (17件) を見る アーレントは、人間が…

書評:『サイバネティクス全史』(トマス・リッド)

「サイバー」という語の起源と変遷を辿ることでさまざまな技術史と技術の文化史を統一的にまとめ上げる、ポピュラーサイエンス本かくあるべしというお手本のような本。二匹目のどじょう狙いのようなあからさまなタイトルによって、むしろ本書の企画のオリジ…

「人工知能と仕事」に関する本を2冊読んだ

AIは人間の仕事を奪うのか?~人工知能を理解する7つの問題 作者: 松本健太郎,池田憲弘 出版社/メーカー: シーアンドアール研究所 発売日: 2018/04/27 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る タイトルにこそ「仕事」が入っているものの…

書評:核融合研究 錯誤と不正の歴史『Sun in a Bottle』(チャールズ・サイフェ)

Sun in a Bottle: The Strange History of Fusion and the Science of Wishful Thinking作者: Charles Seife出版社/メーカー: Penguin Books発売日: 2008/10/30メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 数年前、ロッキード・マーティン社が、10年以内…

【Deep Learning with Python】Kaggleアカウント登録方法とデータのダウンロード

次の例では、Kaggleというデータ分析コンペのサイトで公開されているデータセットを使って、CNNで分類をする。 Kaggleのアカウント登録 Kaggleのサイトからアカウントを登録する。SNSのアカウントを使っても良いし、メールアドレスから登録してもOK。 今回は…

感想文:近代日本一五〇年――科学技術総力戦体制の破綻 (山本義隆)

確固たるエネルギー観に裏打ちされた、重厚な日本文明論。幕末の「黒船」到来から、平成の「福島」の原発事故までを俯瞰し、日本の歪んだ「科学技術立国」観に対して見直しを迫る名著だった。 近代日本一五〇年――科学技術総力戦体制の破綻 (岩波新書) 作者: …

『シンギュラリティ教徒への論駁の書』自選10記事

過去、『シンギュラリティ教徒への論駁の書』で書いた記事の中で、自分が気に入っているものをまとめておきます。 『論駁の書』の論旨に沿って時系列でまとめているので、以下の記事だけでも私のシンギュラリティ懐疑論の骨子が理解できると思います。 問題…

シンギュラリティ教徒への追悼の文 〜ブログ一周年にあたって〜

私のプロジェクトブログ『シンギュラリティ教徒への論駁の書』の最初の記事を、2017年5月18日に投稿してから一年がたちました。この1年間で、AIに関する公的な議論の焦点も、自分の興味関心も移り変ってきました。在野の物好きな人間が見た「AIとシンギュラ…

書評:『11の国のアメリカ史』 (コリン・ウッダード)

ドナルド・トランプの大統領当選以来、アメリカ合衆国の社会の分断は日本のメディアでも取り上げられることも多くなりました。けれども、そこで取り上げられる事象は表層的で、ともすれば「白人至上主義者vs.有色人種」、「共和党vs.民主党」のように単純な…

読書メモ:身銭を切れ!『Skin in the Game』(ナシーム・ニコラス・タレブ)

『ブラックスワン』で有名なナシーム・ニコラス・タレブの新刊。 Skin in the Game: Hidden Asymmetries in Daily Life 作者: Nassim Nicholas Taleb 出版社/メーカー: Random House 発売日: 2018/02/27 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見…

ジャレド・ダイアモンドによる宗教の定義まとめ

上記記事の反応で、宗教の定義が無いというコメントがあったので。 ジャレド・ダイアモンドの「昨日までの世界」の宗教に関する議論の中で、宗教の定義が16件挙げられています。 昨日までの世界(上) 文明の源流と人類の未来 (日経ビジネス人文庫) 作者: ジャ…

【Deep Learning with Python】畳み込みニューラルネット(CNN)の説明

前回は、畳み込みニューラルネットワーク (Convolution Neural Network; CNN) のサンプルコードを動作させてみた。もはやググればいくらでも説明が見つかるので特に説明の必要もないかと思ったけど、ここではCNNの構成要素についての説明を簡単にまとめる。 …

書評:テレビ芸人としてのトランプ『炎と怒り』

私を昔から知っている人は、たぶん、私がちょっとしたトランプウォッチャーだということを知っていると思う。私の好きなアメリカ人ブロガーが2016年1月にトランプの当選を完璧に予測していたこともあり、大統領選挙予備選の早い段階から今日に至るまで、この…

翻訳添削:シリコンバレーのシンギュラリティ大学はいくつかの深刻な現実の問題を抱えている

twitterで「シンギュラリティ」を検索していたら見かけた以下の記事について。 元記事はシンギュラリティというホラを口にして金儲けをする人間の欺瞞が暴き出されておりとても面白いもので、是非読んでほしいのですが、こちらの翻訳はまだ改善の余地が残っ…

Bashでパイプされたコマンドの出力を変数に割り当て、同時に戻り値を調べる方法

ぐぐってもあまり情報が出てこなかったのでメモ。Bashで 「$?」を使えば実行したコマンドの戻り値が取得できるのは有名。 $ false; echo $? 1 # falseの戻り値 Bashの場合、パイプされたコマンドの戻り値は 「PIPESTATUS」という配列に格納されることも、そ…

【Deep Learning with Python】畳み込みニューラルネット(CNN)によるMNIST

Kerasの作者、フランソワ・ショレ氏によるディープラーニングとKerasの解説本 『Deep Learning with Python』の読書メモ。第二部「Deep Learning in practice」では、実践的な問題にディープラーニングを適用する方法を扱う。5章は畳み込みニューラルネット(…